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高齢者が感じる味覚障害と食べやすい食事を作るには?

高齢者が感じる味覚障害と食べやすい食事を作るには?

高齢者は加齢による味覚の低下や、薬剤、病気などで味覚障害が起きる場合があります。味が感じにくいことから食欲不振に陥る方も多く、低栄養の症状が出たり、食べるものが偏ることで高血圧や糖尿病になってしまうことも。軽く見られがちな味覚の低下ですが、実は大切な症状ですので、簡単な対策から取り入れてみませんか。

目次
高齢者が感じる味覚の低下とは? 味わいを楽しむために、食事準備で出来ること いつもの食事に一工夫!食材選びや調理ポイント 味覚だけじゃない!3つの感覚を刺激しよう 味覚低下でも食べやすい食事は、家族みんなで楽しめます

高齢者が感じる味覚の低下とは?

5つの味覚のうち「塩味」「酸味」「苦み」の味覚は、加齢によって穏やかに低下することがわかっています。「旨み」についてはわかっていませんが、「甘み」は加齢による衰えはあまり確認されていません。味覚が低下している高齢者の方で、甘いものを喜んでくれる方が多いのも、頷けることです。
甘み以外が感じにくくなると、ぼんやりした薄味ばかりでは、食事の楽しみも減ってしまいます。また、味覚だけでなく、脳が美味しいと感じるには、匂いや舌触りなど、様々な要因があり、これらも機能低下が起こると、総合して刺激を感じにくい食事を味わっていることになります。

味わいを楽しむために、食事準備で出来ること

食事の際、味が感じにくくなると、やはり食欲も減退します。少しでも満足感のある食事を準備するにはどうしたらよいのでしょう?

ただ単に濃い味付けにするのでは、健康被害を引き起こしかねないので、調理のひと工夫で、味を感じやすく、五感を刺激して、美味しいと感じる食事を用意したいものです。
こんな時、実は特別な料理を作るのではなく、いつもの食事の準備にプラスして出来ることがあります。介護者にも負担なく取り入れたいなら、まずは簡単な工夫から試してみてください。

いつもの食事に一工夫!食材選びや調理ポイント

○亜鉛豊富な食材選び

亜鉛不足になると味覚障害が起きることがあるため、亜鉛を豊富に含んだ食材を普段から食事に取り入れていくことが大切です。加工食品などの添加物が多い食材で食事を済ますことが多いと、亜鉛の吸収を阻害してしまい、摂取量が不足してしまうので、ハムや練り物などの加工品、インスタント食品などを控えることも大切です。

亜鉛の多い食材

肉・魚介・種実・穀類など。
特に多いものとしては牡蠣・あわび・レバー・牛肉・卵・チーズ・納豆・アーモンドなどを取り入れるとよいでしょう。


○水分が豊富な食事にする

高齢者の方から、食事がざらざらして美味しくない等、料理の感想を聞くことがあります。加齢によって唾液の分泌が低下し、口当たりやのど越しが悪くなるだけでなく、食べ物に含まれる味物質が、唾液に溶け込んで味蕾と呼ばれる味覚受容器に届けられる働きも低下していることがわかります。すべて煮物などにする必要はありませんが、献立に組み合わせていくとよいでしょう。
  • 献立に必ず汁物を添える。
    塩分が過剰にならないよう、少量あるいは具だくさんにするとよいでしょう。お水やお茶ではなく献立に組み入れることで食事の合間に摂りやすくなります。
  • おかずの一つに水分の多い煮物・蒸物・あんかけなどを取り入れる。
    水分が多いと味を感じやすくするだけでなく、飲み込みやすくもなり、食事がスムーズに進みます。
  • とろみをつける。
    水分を多くするためにとろみが有効ですが、それ以外に味を濃く感じる効果が期待できます。とろみがつくと、舌の上に長くとどまるので、さらりとした水分より味をしっかり感じることができます。あんかけなどだけでなく、お味噌汁などでも、気がつかない程度のとろみを片栗粉でつけるだけで効果的です。減塩したい方にも有効で、酢の物やお浸しなどにも活用できる方法です。

○味にメリハリをつける

同じ味ばかりの食事では満足感も感じにくいもの。献立全体に変化をつけることで味を感じる刺激にもなり満足感も出ます。
  • 味を濃くする。
    調味料を増やして過剰な塩分にするのではなく、出しの旨みを濃くしたり、マヨネーズやチーズなどのコクを取り入れるとよいでしょう。
  • 献立に味の違いを出す。
    五味と言われる和食の基本、塩味、甘味、酸味、苦味、辛味の料理を出来るだけ献立に組み合わせると、よい刺激になります。

味覚だけじゃない!3つの感覚を刺激しよう

美味しく感じるのは味だけではありません。感覚を刺激して食欲を増進することで、食事を楽しむことができるようになります。食べやすくするには味覚以外の感覚も取り入れた食事にしましょう。

●視覚

視覚は味の8割を左右すると言われるほど、味や食欲に影響します。料亭のような見栄えを!と意気込まなくても、和食で基本となる、「赤・青(緑)・黄色・黒・白」五色取り入れるだけで華やかなものになり、食欲もわきます。1品だけで考えず、食卓の食事全体で考えると気軽に取り入れられます。料理に取り入れる時間が無い、難しいと感じる場合は食器の色合いでプラスするのもよいでしょう。

●嗅覚

加齢により嗅覚も低下する場合があるので、香りは料理の違いにメリハリをつける為にしっかりつけた方がよいでしょう。香りと言えば香辛料ですが、辛いものは刺激が強く、酸味のある柑橘類も含め、むせやすくなるためお勧めしません。柑橘類の皮を削って香りを付けたり、山椒、胡麻、大葉、木の芽など、比較的おだやかな香辛料や香味野菜などで香りづけしてください。

●触覚

唇や舌に触れる温度が刺激となり、食欲を活性化してくれます。冷たい料理は冷たいまま、温かい料理は温かいまま提供するだけでも食欲が全く違います。適温で料理を食べられるように、必要あれば料理途中でも温め直したり、冷やしたりして楽しんでください。

味覚低下でも食べやすい食事は、家族みんなで楽しめます

食べ物を美味しく感じるだけで、食事の時間が楽しく、充実した生活につながります。 食事を美味しく感じるための工夫は、味覚が低下している方だけでなく、ご家族皆様の普段の食事にも当てはまることなので、ぜひ簡単なものから取り入れてみてください。 より美味しくより満足感のある食事が楽しめるでしょう。
また、味覚については、加齢による機能低下だけでなく、味覚減退、消失、異常など様々な病気による症状もあることから、味覚に異常を感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。

※当コラムは、ご利用者の健康状態や医療の必要性に言及したものではありません。また、当社は、情報自身について、その内容の真偽、適格性、正確性について保証や責任を負うものではありません。

日本料理教室講師 田村佳子

日本料理教室講師田村 佳子

栄養士/調理師/和憩カルチャースペース主催。

大学で海洋水産資源の研究後、大手小売業水産担当として勤務。 水産の流通を把握してから栄養士を所得。調理師専門学校の日本料理で勤務し、日本料理の技術と知識を習得した後、独立。 2008年和憩カルチャースペースを開設し、得意の魚メインにした日本料理教室を開講している。 朝日放送「おはよう朝日です」出演、市場や企業とのタイアップレッスン、行政施設などでの教室開講など活動中。

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