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高齢者がおいしく感じる、料理の適温は?

高齢者がおいしく感じる、料理の適温は?

冷めた料理、冷たいお弁当、想像するだけでも、味気のない雰囲気がしませんか?味付けや見栄えをいくら丁寧にして、栄養価もしっかり考えて料理を作っても、冷たくなったのでは楽しみが半減してしまい、ありがたみも減ってしまうもの。せっかく用意した料理、おいしく満喫していただきたいものです。
そのためには高齢者の方の適温を知って、ベストな温度を提供、それを食事の時に維持できるように簡単なポイントをおさえて取り入れてみてください。驚くほどお食事の満足度が上がりますよ。

目次
おいしい温度と、高齢者の食事の適温 温度が食事に与える影響は? 温度を気遣った食事とは? 長く楽しめて冷めにくい・ぬるくなりにくい料理と食器のポイント 温度は大切な調味料

おいしい温度と、高齢者の食事の適温

おいしく感じる適温は温かいものが60~70℃、冷たいものは5~12℃と言われており、それ以上やそれ以下は、味わいより、熱さや冷たさを楽しむことが目的の食事になります。高齢者には、極端な温度は火傷やお腹を冷やすことにつながるので、温かいものは50℃程度、冷たいものは10℃程度、室温に近いものも加えて、温度による刺激がよりはっきりするように食事を組み合わせるとおいしく感じるだけでなく、刺激で食欲も促進されます。
細かく見てみると、日本人がおいしく感じると言われている温度は料理によっても異なるので、汁物を一番熱く、主食、主菜を45~55℃程度の温かさに、副菜を常温のものと冷やしたものとで組み合わせると最適です。

温度が食事に与える影響は?

「熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに」という言葉を聞いたことがありませんか?
昔から日本料理では、適温で料理を出すことが重視されてきました。これは、よりおいしくいただけるようにとの配慮で、温かいものは冷えたものより香りがたち、風味をより感じられることに加え、うま味も強く感じることができます。また、冷えるとかたくなる食材が多いので、温かい料理はやわらかくて流動性もよく、おいしく感じることができます。
反対に、冷たい料理では食感が楽しめます。温度も味付けのひとつとしてもよいくらい、大切なものだと昔から考えられてきたからこそ残っている言葉でしょう。

味付けに関しては、味覚には種類があるので、温かいと、甘味、塩味はマイルドな優しい刺激となり、常温で甘味は一番強く重たく、冷えると塩味は強くきつくなります。酸味は温めると香り立ち、苦味は温度を上げると感じにくくなります。
常温や冷やして食べる料理の甘味、塩味は控えめに調整することも必要など、食べるときの温度により、味付けを調節することが本来は必要なことです。

また、高齢者に対応するときには特に、温度の刺激がおいしく安全に食べていただくために効果的です。嚥下反射が体温に近い温度では起こりにくく、温かい料理、冷たい料理の温度刺激が嚥下反応を誘発しやすいと言われているため、嚥下障害がある方にも、温度は大切な食事条件になっています。

温度を気遣った食事とは?

食事には温度が大切ですが、わざわざ温度計で測ったり、毎回色々な温度の料理をすべて準備する必要はありません。基本と理想を知り、少しでも今日の料理に取り入れることができればそれだけでもおいしく感じる、充実した食卓を囲めるでしょう。

介護食の目安温度

  • 主食
    温かい(40~42℃):ご飯
  • 汁物
    熱い(50~60℃):お汁(熱々の時に味付けをすると食べるときには塩分が強く感じられます。控えめで仕上げましょう。)
  • 主菜
    温かい(45~55℃):煮物、蒸物、焼き物、揚げ物、炒め物など(たんぱく質系の多い主菜は冷めるとかたくなりやすいので、できるだけ作りたてを。)
  • 副菜
    常温(24~25℃):和え物、煮物、炒め物など(常温では甘味が強く、くどく感じられる為、甘味控えめのレシピの方が食べやすく仕上がります。)
  • 副菜
    冷たい(10~20℃):酢の物、和え物など(冷やすと甘味がさっぱり食べられるので、甘味をつけるのがおすすめ。塩味はきつく感じるので控えてください。)
温度を気遣った理想の食事は、今日のご飯、なに作ろう?と迷った時の献立作りのヒントにもなります。

長く楽しめて冷めにくい・ぬるくなりにくい料理と食器のポイント

一番おいしい温度で食べてほしいと思い、提供することができてもすぐに冷めていったり、せっかく気持ちを込めて料理を出したのに、ゆっくり食べているのを見て残念に感じたり、イライラするのでは逆効果です。
食事提供の温度管理の目安や、適温で提供するだけでなく、食事中の温度をできるだけ維持する工夫があるので、ぜひ試してみてください。

  • 器の使い方
    分厚い器がおすすめです。昔ながらの厚い陶器やガラスの器などがおすすめ。また、お椀やボウルなど木の厚い器も。温かいものはお湯かレンジで器を温めて、冷たいものは器を冷蔵庫で冷やしたり、夏場なら凍らしておくことも。
  • 冷めにくくする調理の工夫
    とろみをつけると流動性が抑えられて冷めにくくなります。あんをかけたり、みそ汁に気がつかない程度のとろみをつけるだけでも違いが大きく出ます。
  • 温め直しのポイント
    温め直しするときはかたくなりやすいので、酒やしょうが汁など水分を足してラップで密封してから蒸すように温め直してください。たんぱく質類は加熱し過ぎるとかたくなるので注意が必要です。
温度を楽しめる料理をお家で簡単に調整できるようになるようにポイントをおさえて取り入れてみてください。

温度は大切な調味料

おいしさにとって温度は欠かせない要素です。主食、主菜を温かく、副菜を冷たくなど、食事の中で組み合わせて刺激を感じることで、メリハリが出て食欲増進にもつながります。高齢者だけでなく、家族みんなが適時適温で食事を楽しめるようになると、いつもの食事がより一層充実したものになるでしょう。ぜひ色々な工夫をできるものから取り入れてみてください。

※当コラムは、ご利用者の健康状態や医療の必要性に言及したものではありません。また、当社は、情報自身について、その内容の真偽、適格性、正確性について保証や責任を負うものではありません。

日本料理教室講師 田村佳子

日本料理教室講師田村 佳子

栄養士/調理師/和憩カルチャースペース主催。

大学で海洋水産資源の研究後、大手小売業水産担当として勤務。 水産の流通を把握してから栄養士を所得。調理師専門学校の日本料理で勤務し、日本料理の技術と知識を習得した後、独立。 2008年和憩カルチャースペースを開設し、得意の魚メインにした日本料理教室を開講している。 朝日放送「おはよう朝日です」出演、市場や企業とのタイアップレッスン、行政施設などでの教室開講など活動中。

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