高齢者の貧血対策!鉄を手軽に摂る方法とは?

貧血を予防するには何を食べてよいかわからない、しっかり予防対策をしているのに貧血と言われてしまう、など悩まれていませんか?
貧血対策に必要な栄養素をしっかり食事に取り入れていく必要があります。しかし高齢になると食事量が落ちることがあり、摂取が難しい場合もありますよね。
そこで今回は、高齢者が栄養素を取り入れやすい食事法をお伝えします。
- 目次
- 高齢者の貧血の症状と、その原因とは? 鉄が豊富で取り入れやすい食材は、なんと缶詰だった?! ビタミンCは非ヘム鉄の吸収UPに最適! 貧血は鉄欠乏だけが原因ではない?! 高齢者の貧血対策
高齢者の貧血の症状と、その原因とは?
貧血の中で最も多いものは鉄欠乏貧血です。これは、血液中の赤血球に含まれているヘモグロビンというタンパク質が不足することで起こります。
この、ヘモグロビンの材料になるのが鉄です。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ働きがあるため、不足すると体が酸欠状態になり、めまいや息切れ、だるさなどの症状が現れます。
高齢者の場合、日常の生活動作がゆっくりなため、このような症状に気づきにくいことがあります。
高齢者でもわかりやすい症状としては、主に以下5点などの症状がある場合です。
- 休まないと5分以上歩けない
- 運動するのがつらい
- 顔色が悪いと人に言われる
- 唇の隅が切れる
- 朝起きにくい
鉄欠乏貧血の原因は食事からの鉄の摂取不足が一般的です。しかし高齢者の場合は食事からの摂取不足以外にも、消化管機能の低下、消化管手術後の鉄吸収機能の低下、消化管潰瘍や痔からの出血、血尿などが原因の場合があります。
また、貧血は鉄欠乏貧血以外に、赤血球の生成に必要なビタミンB12や葉酸が不足した巨赤芽球性貧血の場合もあります。
(※参考:中村丁次、川島由起子、外山健二2020年「臨床栄養学(改訂第3版)」南江堂 / 飯田薫子、寺本あい2020年「一生役立つ きちんとわかる栄養学」西東社 / 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「貧血」 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/hinketsu.html )
鉄が豊富で取り入れやすい食材は、なんと缶詰だった?!
鉄欠乏貧血対策に必要な食べ物は、ヘモグロビンの材料である鉄を十分に摂ることです。
鉄はヘム鉄と非ヘム鉄の2つに分けられます。肉や魚などの動物性食品に含まれるヘム鉄の吸収率は15~25%で、野菜や大豆製品などの植物性食品に含まれる非ヘム鉄の吸収率は2~5%です。また、非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率がグンと落ちてしまいます。
そのため特にヘム鉄を多く含む、あさり水煮缶、牛肉の赤身、牛ひき肉、レバー、さんま、キハダマグロ、しじみなどを積極的に食事に取り入れましょう。
特にあさり水煮缶は生のあさりよりも、およそ8倍もの鉄が含まれています。あさり水煮缶は缶詰なので、砂抜きの手間もありませんし、常備しておくこともできます。汁物や和え物、炒め物などにプラスして毎日食べることができますね。
その他に、高齢者の場合、牛肉の赤身は1枚肉よりも牛ひき肉方が食べやすいです。しかし、ひき肉はむせ込みやすいため、ハンバーグにしてたっぷりのソースをかけると崩してもまとまりやすくなり、食べやすくなります。
また牛ひき肉入りの煮汁を、片栗粉でとろみをつけたあんにして、柔らかく煮た大根やかぶ、かぼちゃにかけるととろみがあるため食べやすくなりおすすめです。
また、高齢者は刺身を好む方が多く食事も進みやすい傾向にあります。中でもまぐろは大人気メニューで、キハダマグロの刺身はとても喜ばれます。さらに醤油と油を少し加えて漬けにすると食べやすさも増します。
そして、非ヘム鉄は小松菜、ほうれん草、大根の葉、枝豆、納豆、厚揚げ、豆腐などに多く含まれています。生野菜を調理するのが大変という方は冷凍のものでも鉄を摂ることができます。納豆はそのまま食べることができるため常備しておくと便利です。
食事量が悪いときは鉄が強化されたゼリーやムースを利用すると良いでしょう。また間食などで鉄が強化された菓子類などもおすすめです。このように、鉄強化の補助食品も活用しながら、上手に鉄の摂取量を増やしていきましょう。
(※参考:飯田薫子、寺本あい2020年「一生役立つ きちんとわかる栄養学」西東社 / 中村丁次、川島由起子、外山健二2020年「臨床栄養学(改訂第3版)」南江堂 / 香川明夫2020年「七訂食品成分表2020」女子栄養大学出版部 )
ビタミンCは非ヘム鉄の吸収UPに最適!
吸収率が低い非ヘム鉄の吸収を促進させる方法があります。それはビタミンCと一緒に食べることです。
ビタミンCは赤ピーマンや芽キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レモン、いちご、キウイフルーツなどに多く含まれています。
ほうれん草とレモン汁の和え物や厚揚げとブロッコリーの炒め物など非ヘム鉄とビタミンCを組み合わせて食べるようにしましょう。
また、非ヘム鉄は動物性タンパク質である肉や魚、卵、乳製品と一緒に食べることでも吸収率が良くなります。
例えば豆腐とひき肉を使った麻婆豆腐に赤ピーマンを加える、芽キャベツのスープに鶏肉を加えるなど組み合わせてみてくださいね。
その他、胃酸の分泌を高めることでも鉄の吸収がよくなります。胃酸の分泌をよくするためには咀嚼を増やし、酸味のある柑橘類や酢、梅干しなどの料理を取り入れることで吸収率が高まります。
ちなみに、鉄を補給する調理法のポイントとしては鉄の鍋やフライパンなどを使って料理をすると鍋の鉄が溶けだして鉄補給にもなります。調理用の鉄玉なども売られています。
逆に鉄の吸収を妨げてしまう食べ物は紅茶や緑茶に含まれるタンニンです。食事中は控えましょう。
また玄米など未精製のものに含まれるフィチン酸や食物繊維を過剰に摂ることでも鉄の吸収の妨げになるため注意が必要です。
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野菜いっぱい麻婆
鉄分たっぷりなほうれん草と動物性タンパク質を組み合わせた非ヘム鉄吸収率アップメニューです。
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水切りヨーグルトのいちごティラミス
動物性タンパク質のヨーグルトとビタミンCたっぷりないちごを組み合わせたメニューです。ヨーグルトは水を切ることでゆるくなり過ぎず、飲み込みもスムーズです。
(※参考:中村丁次、川島由起子、外山健二2020年「臨床栄養学(改訂第3版)」南江堂 / 飯田薫子、寺本あい2020年「一生役立つ きちんとわかる栄養学」西東社 )
貧血は鉄欠乏だけが原因ではない?!
鉄欠乏貧血以外の貧血の一つに、正常な赤血球が生成できない巨赤芽球性貧血があります。これは、ビタミンB12や葉酸が欠乏により起こります。
ビタミンB12は胃から分泌されるキャッスル因子と一緒に吸収されます。そのため胃粘膜の萎縮や内因子の分泌が不足することでビタミンB12の吸収が悪くなり、このような巨赤芽球性貧血を引き起こす可能性があるのです。
ビタミンB12は肉や魚介類などの動物性食品に多く、レバーやあさり水煮缶に豊富です。葉酸は枝豆、ブロッコリー、アスパラガス、オクラなど緑色の野菜に多く含まれています。
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グリーンアスパラガスの酢みそ和え
酢味噌がアスパラガスにからんでいるため食べやすいメニューです。
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春の茶碗蒸し
鉄やビタミンB12が豊富なあさり入りの茶碗蒸しは嚥下状態が良くない方も食べやすいメニュー。
(※参考:飯田薫子、寺本あい2020年「一生役立つ きちんとわかる栄養学」西東社 / 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「貧血」 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/hinketsu.html)
高齢者の貧血対策
高齢者の貧血対策にはバランスのよい食事はもちろんですが、毎食少量でも良いので食べるということが大切になってきます。一度にまとめて食べられない場合は少量を数回に分けて食べましょう。
高齢者の場合、嗜好の問題や義歯が合っていない、歯が欠損しているなどの理由から食事量が落ちることがあります。食事の量が落ちると鉄やビタミンB12、葉酸以外の栄養素も不足するため注意が必要です。食事量が落ちないように好みを優先したり、定期的な歯科検診なども大切ですね。
高齢者だけの生活や一人暮らしの場合、食事の用意や食材の買い物が億劫になるということもあります。栄養のバランスを考えた食事を提供してくれる配食サービスや宅配サービスなどを利用も貧血対策にはおすすめです。
※当コラムは、ご利用者の健康状態や医療の必要性に言及したものではありません。また、当社は、情報自身について、その内容の真偽、適格性、正確性について保証や責任を負うものではありません。